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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

「いいえ」
 小紅は首を振り、少し頬を上気させた。
「―許婚者です」
 単なる知り合いというのも他人行儀すぎると馬鹿正直に考え、友達というのも妙だし、少し思案してから、そう言った。まあ、確かに結婚の約束は交わしているのだから、許婚者でも間違いではなかろう。
「許婚者? 何だ、もう、そんなヤツがいるのか。いや、そいつは幸運な野郎だな」
 と、これは小紅には聞こえないほどの呟きが洩れた。

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