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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 谷津藩の現藩主相模兼嗣、つまり栄佐の母の兄は時の老中の座にある。しかも、兼嗣には男子がいない。息子のいない兼嗣は甥の栄佐を幼時から可愛がっていた。一度は角倉家は分家から養子を迎えて相続させ、栄佐を自らの養嗣子として谷津藩の次期藩主に据えたいと申し出があったほどだ。
 今でも兼嗣の意は変わっていない。この伯父は早くから甥の英明さ、俊敏さを見抜いていた。だが、この申し出は栄佐のひと言で解消となった。

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