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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第20章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 定命  

 しかしながら、彼は十六ですべてを棄てて、角倉栄之進ではなく、ただの栄佐になった。それから憧れていた芝居の世界に飛び込み、立て役目指して厳しい稽古にも堪えていたのである。いまだ大部屋ながら、その艶麗な姿は錦絵となれば即完売というほどの人気役者とまでなった。
 江戸の芝居好きの女なら、〝板東碧天〟という名を知らぬ者はいない。

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