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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第21章 第二部・第四話【悲願花~女になった男~】 兄の悩み

「何だか、来る道すがら見てたら、〝忌中〟の紙が二軒も貼ってあって、愕いたよ。そのせいか、長屋全体が静まり返ってるような気がしないでもねえ。何か、あったのか?」
 そこまで気づいているのなら、敢えて隠す必要もない。小紅はここ数日で起こった不幸について簡単に説明した。
「なるほどねぇ。婆さんの方は寿命と諦めもできようが、愛盛りの赤児を亡くしちまったら、そりゃ、両親は気も狂わんばかりになるわなあ」
 輿平太はもっともらしく頷いた。

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