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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

 寄り合いは大抵、深川辺りの料亭で行われるが、その後は気の合う者同士が吉原へ繰り出すと相場が決まっている。父もまだ真面目に商いをしている頃は寄り合いの後、吉原の遊廓に登楼していたようであった。
 文机を離れてこちらにやってきた武平と向かい合うと、叔父の顔色がいつになく悪いのがよく判った。
 やはり、疲れているだろうのに、こんな時間に来るのではなかった。袢纏は一昨日、仕上がった。一刻も早く渡したくて気が逸ったのだが、せめてあと一日は待つべきであった。

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