無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　重い病でもたちまちにして癒える功徳のあるこの練り歩きに身体の弱った妹が参加できるはずもない。だから、代わりに兄の輿平太が妹の晴れ着を纏って参加した。輿平太はお紀和になりきったつもりなのか、うっすらと化粧をして髪も解き流し、紅まで差していた。妹想いの彼の覚悟が切なく小紅にも伝わってくる。
「大般若般羅蜜多ー」
　和尚と声を合わせて、その場にいた者たちすべてが声を揃えて唱えるせいか、ありがたい経が大音声となって響き渡った。