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　輿平太は経を唱えながら、男泣きに泣いていた。
　やがて読経が終わり、集まった長屋の人々に和尚手ずからお札が配られる。皆、一人ずつが和尚の前に進み出て、神妙な顔で厄除けのお札を押し頂いた。
　実際、このお札を家の玄関先に貼っておいた家は疫痢の害に遭わなかったという噂が真しやかに流れている。和尚や付き従う人々が今度は次の家目指して去ってゆくのを、長屋の人々は居並んでいつまでも見送った。