テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆

 栄佐は露骨に眉をひそめた。
 何だ、この男は。自分の方が小紅の住まいの前をいかにもいわくありげにうろちょろしていた癖に、俺が小紅を弄んで玩具にしているだと?
 今日の栄佐はいつものように藍染めの着流し姿だ。髪は月代は剃らずに綺麗に整えている。確かに一見して遊び人風には見えるかもしれないが、こんな胡乱な男に―しかも彼の大切な小紅の住まいの様子を窺っていた男に言われたくはない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ