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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆

「っ!」
 小男からヒュッと声にならない声が洩れた。愕きのあまり、声も出ないといった体である。その瞳には、何故、お前が知っているのか? とあからさまに浮かんでいた。
 と、男はいきなり脱兎のごとく駆け出した。
「おい、待てよ。とっつぁん」
 栄佐は大声で呼ばわったが、小柄な男は歳の割には敏捷な身のこなしで瞬く間に姿を消した。

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