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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆

 木戸番は大抵、どこの長屋でもそうであるように、小さな店を開いて雑貨など細々としたものを売っている。ちり紙などの日用品に始まり、子どもらの歓ぶ駄菓子やおもちゃなどが助蔵の店先にはいつも並んでいた。
 冬にはそれに焼き芋が加わる。これは長屋の人々にとっては毎年欠かせない風物詩でもあり愉しみでもあったのだ。
「どうやらそういうことになりそうだな」
 栄佐は頷き、小紅に焼き芋を差し出した。

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