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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆

 栄佐の細くて長い指先が伸びてきて、小紅の額にかかったひとすじの乱れ毛をそっと梳いた。この先に待ち受ける展開を予想して、小紅は急に心ノ臓が煩く騒ぎ出すのを意識する。身体中の血が集まったのではと思うくらい、頬が熱くなった。
 ここから先はきっと、彼は私を―。小紅が眼を閉じたその時、クスクスと忍び笑いが聞こえてきて、小紅の緊張が一挙に緩んだ。

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