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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第22章 第二部・第五話 【冬柿】 予兆

 栄佐がフと心なしか淋しげな笑みを刻む。
「いや、そうじゃねえ。馬鹿だな、俺がそんなことを思うはずがねえだろう」
 彼はふと手を伸ばし、先ほどの積極さが嘘のように小紅の髪を躊躇いがちにそろりと撫でた。
「これでようやっとお前と祝言を挙げられると、俺は口で言うのも男として情けないが、天にも昇る心地さ。それくらい嬉しいんだ。この気持ちだけはちゃんとお前に判っていて欲しい、小紅」

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