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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿

―殿、どうか角倉のお家を我らをお見捨て下さりますな。
 また源五の哀切な声音が甦り、栄佐は遠い眼で空の彼方を追った。霜月の空は次第に高くなる。
 長屋の女たちがよく買い物に行く小さな青物屋の店先には柿が並んでいる。籠に山盛りになった冬柿が夕陽の色を思わせる艶やかな橙色に輝いていた。

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