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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿

 自分のようなものが婿がねになれるとは思えなかったが、それでも主人に認められたい一心で読み書き算盤も誰よりも早く憶え、一筋に奉公に励んだのは、心のどこかに年々美しくなってゆくお嬢さまに少しでもふさわしい男になりたかったから。
 だから、十六で手代に抜擢された日、一人奥の居室に呼ばれて先代から、これからは娘婿候補としての待遇を与えると告げられたときには泣きたいほど嬉しかったという。

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