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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第23章 第二部・第五話 【冬柿】 冬柿

 そんな母を父は溺愛していた。母が亡くなったその夜、父は男泣きに泣きながら、想い出話をしてくれたものだ。
―おっかさんは私の初恋の女だったんだよ。
 父が上州屋に丁稚として奉公に入ったのは八歳のときだったという。その時、一目見た主人の愛らしい一人娘に父は恋に落ちた。

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