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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

 川沿いがちょっとした土手になっている。緩やかな勾配を描く坂を滑り降り、下の草むらに二人は並んで座った。
「どうぞ」
 栄佐が竹包みを差し出すと、仁助は〝頂きます〟と煮豆をひと粒つまんで口に放り込んだ。
「私はあの子の父親と認めて貰えないのも当然なんですよ」
 仁助は自嘲気味に呟く。栄佐は慎重に言葉を選んだ。

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