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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 父が出奔した時、上州屋に残っていた奉公人は数えるほどだった。その中の一人はおさわといって、小紅を育ててくれた母代わりの乳母であった。母は優しい人であったけれど、身体が弱く病がちであったから、小紅を育てたのは乳母だと言って良い。

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