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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

 栄佐はこの時、つくづく悟った。恋女房にはこの先、何があっても深酔いはさせない方が良さそうだ。酒を過ごす度に〝べらんめぇ〟口調で呂律怪しく管を巻かれては堪ったものではない。
「おいっ、碧天、手前はこの小紅サマの言うことをちゃんと聞いてるのか! 江戸っ子を馬鹿にするんじゃねぇよっ。このあたしは江戸生まれの江戸育ち、生粋の江戸っ子の小紅サマなんだから」
 最早、言っていることが支離滅裂だ。

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