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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

 その傍らでは仁助が一人、黙々と手酌でやっている。こちらももう既にどれだけの酒量を過ごしたか知れたものではない。酒には強いと自負している栄佐だが、この親子の底なしぶりには到底叶いっこないと早々と甲を脱いだ。
「ちょっと、あんた」
 呼ばれて振り向けば、仁助が袖を引っ張っている。粋な女に袖を引かれるのは歓迎だが、こんなおっさんに引かれてもなぁと、それでも相手が舅だけに栄佐は引きつった愛想笑いを浮かべた。

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