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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

「何ですか?」
「盃が空になってますよ」
「ああ、気がつかなくて、済みませんね」
 栄佐は近くにあった銚子を手にしたが、生憎と空だった。
「親父さん、もう全部なくなっちまってますよ。今日はかなりの量を飲んだし、そろそろお開きにしませんか? 飲み過ぎはあまり身体に良くないですし」
 と、仁助の細い眼がつり上がった。こちらも小紅同様、色白の面どころか、眦まで赤く染めている。

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