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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

 思わず遠い幸せだった頃の記憶に引きずられそうになった時、肩にそっと触れた温もりがあった。見上げれば、視線の先には栄佐の笑顔がある。
「もう、過去は振り向くな。すべては終わったんだ。おとっつぁんもああして無事に帰ってきたし、また生きる気力を取り戻して前向きにやろうとしてるんだ。今度は、お前が親父さんに心配をかけねえように幸せになる番だぜ」
「―はい」

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