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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第24章 第二部第五話 【冬柿】 父と娘

 小紅は頷き、精一杯の微笑みを浮かべて惚れた男を見た。
 仁助は大店の隠居と和やかに談笑している。何が面白いのか、隠居が明るい笑い声を上げ、仁助もつられたように笑顔を見せた。
 買い物を終えた女房が子どもを連れて橋を渡って町人町の方へと帰っていく。
 二人はしばらく仁助の様子を見守っていたが、やがて、どちらからともなく顔を見合わせた。

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