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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

 武平が淡く微笑した。この男(ひと)の笑顔はこんなときでも、いつもと変わらない。どこまでも優しくて、泣きたくなるほど優しすぎて、小紅はその笑顔を見ていると切なくなる。
 だが、と、小紅は心の中で呟く。
 優しさも毒と同じで、時には過ぎれば毒になることもあるのよ。それを叔父さまは知っているのかしら。
「いや、引き取る時、言わない約束だったし、私も敢えて言おうとは思わなかった。準平はずっと昔から今も私の息子だよ。未来永劫、それは変わらない」

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