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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

 武平は静かな声音で言った。
「あの子はどうしようもないヤツだが、根はけして悪くはない。愚かでもないから、しっかり者のお前が側についていてくれれば、きっと難波屋の次の当主としてもちゃんとやっていけるだろうと信じている。どうか、倅を支えてやってくれ」
 言わないで。
 小紅は心の中で叫んでいた。
 私を女として見ている、好きだと言いながら、その同じ口で準平のものになれという。

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