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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

「判った」
 小紅はひろげた武平の腕の中に飛び込んだ。堪えようとしても、涙が後から後から溢れてくる。
「叔父さま、たった一度、呼ばせてね」
 武平さんと、小紅は吐息のような声音で呼んだ。愛しい男の腕の中でその温もりに包まれながら、十五年の生涯で初めて愛した男にその心を捧げた。
「小紅」
 武平が小紅の漆黒の髪に顎を当てた。

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