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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

「最後に顔を見せてくれないか」
 そう言われ、小紅は顔を上げる。武平は小紅の顔を刻みつけるように見つめ、人差し指で彼女の目尻に堪った涙をぬぐった。
「愛しているよ」
 武平の唇が小紅の唇にそっと重なった。触れるだけの口づけ(キス)、本当に蝶の羽根が掠めるほどの淡いものにすぎなかった。けれど、小紅にとっては初めての口づけであり、生涯の想い出になるであろう口づけであった。

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