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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第2章 【残り菊~小紅と碧天~】 恋一夜

 もし仮に武平にも自分にも他人を顧みずに自分たちだけが幸せであれば良いと思えるだけのしたたかさ―ある意味では強さともいえる―があれば、二人はその夜、結ばれていたはずだ。
 それは身勝手さという言葉で言い換えることもできる。誰かが幸せになる一方では、また誰かが報われない想いに涙することもあるのだと割り切れれば。しかし、二人ともにその強さを持っていなかった。

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