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　だが、小紅を羽交い締めにしているのは逞しい男の腕だ。その刹那、小紅の脳裡に一月に長屋で寝込みを襲われたときの出来事が甦った。　
　あの時、刺客の顔を見たわけではない。しかし、小紅は仕立屋だ。手が何より大事の商売で、人を見るときはまず一番に顔よりも手を見る。手を見れば、その人の大体の人となりや暮らしぶり、例えば、どんな仕事をしているのかも判る。