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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

 小紅は昼前に、一度、店を覗いたが、武平の姿は見当たらなかった。客がいないせいか、若い手代や良い歳をした番頭までもが辻占帳なるものを囲んで、明日の運勢はどうのこうのと話が盛り上がっている。
 普通、占いとかに夢中になるのは女だけだと思っていたけれど、現実にはそうでもないようである。とはいえ、小紅は、そのテの占いとか迷信はあまり信じる質ではないが。
「で、その辻占い師っていうのが十八、九の凄ぇ美人で、これがおまけによく当たるのさ」

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