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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪

 男が漸く警戒心を解いたように肩を竦めた。
「俺はお前としっぽりやるのに夢中だったから、そんなものは聞いちゃいねえさ」
「いやだ、お前さんったら」
 しなだれかかる女をとろけるような眼で見ている男も女の方も栄佐は既に眼中にない。初で世間知らずの大店の娘を番頭がうまく誑かしたときたか。主人に知れたら大事だろうが、意外にこの男、それを狙って更に娘婿に納まろうという算段かもしれない。
 ま、そんなことは俺の知ったこっちゃない。

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