一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪
栄佐は気安い笑みを浮かべる。
「なあに、心配するには及ばねえ。こんなところで出逢ったのも多生の縁だ。俺だって他人さまの恋路をとやかく言うほどのご立派な人間じゃねえし、第一、そんな野暮天はしねえ。娘さん、それじゃア、あんたは女の悲鳴を聞いたんだね」
また魅惑的な微笑を向けると、それだけで女は連れの男をはばかる風もなく、うっとりとした表情で栄佐を見た。
「あい、私は確かに聞いたよ。あれは間違いなく女の声だった」
「なあに、心配するには及ばねえ。こんなところで出逢ったのも多生の縁だ。俺だって他人さまの恋路をとやかく言うほどのご立派な人間じゃねえし、第一、そんな野暮天はしねえ。娘さん、それじゃア、あんたは女の悲鳴を聞いたんだね」
また魅惑的な微笑を向けると、それだけで女は連れの男をはばかる風もなく、うっとりとした表情で栄佐を見た。
「あい、私は確かに聞いたよ。あれは間違いなく女の声だった」