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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第26章 第二部・第六話【春咲く花】 略奪

「ご母堂さまは今、御仏間におられまする」
「あい判った。しばらく母上と話を致すゆえ、誰も近づけるな」
「はっ」
 源五は恭しく頭を下げ、栄佐をそのまま見送った。広大な庭をぐるりと回れば、大体どの部屋の前に来るかを長年、ここに暮らした栄佐は知っている。奥まった場所まで来た時、栄佐はとある部屋の前で止まった。
 渡廊に面した障子がきっちりと閉まっている。

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