テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第27章 第二部・第六話【春咲く花】 逢瀬

「まあ、済みませんね」
 女は満更でもない顔で礼を言い、肩を竦めた。
「たいしたことじゃありませんよ。それじゃ、夕餉までごゆっくり」
 静かに眼の前で障子が閉まり、栄佐は大きな吐息をついた。心は大きく波立ち、身体は怒りに震えていた。
―小紅が三笠屋という好色な野郎に水揚げされるだって?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ