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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第27章 第二部・第六話【春咲く花】 逢瀬

 忙しない足取りで行き交う旅人、この宿場町の在の者らしい人間、小さな宿場町に雑多な人間がたむろっている。夜通し馬を駆けさせてきた疲れが溜まっていたのだろうか、意外に長い時間眠っていたようで、既に短い冬陽は傾きかけ、往来は蜜色の夕陽に包まれようとしていた。
「小紅―」
 栄佐は同じ宿のどこかに囚われているはずの想い人をひそかに呼んだ。 

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