一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第27章 第二部・第六話【春咲く花】 逢瀬
江戸の大切な男―栄佐のことを持ち出して脅されては従わないわけにはゆかない。江戸からここに来るまでもずっとそうだった。小紅が逃げ出そうとする度に、言うことをきかないと見るや、栄佐の身がどうなるか判らないと脅迫され、結局はなすがままにここまで連れてこられるしかなかった。
緋色の褥はまるで夕刻に見た、血の色に染まった太陽のようだ。その褥に小紅が横座りになると、信右衛門は満足げに頷いた。
「そう、素直で良い子だ。後はすべて私に任せておけば良いからね」
緋色の褥はまるで夕刻に見た、血の色に染まった太陽のようだ。その褥に小紅が横座りになると、信右衛門は満足げに頷いた。
「そう、素直で良い子だ。後はすべて私に任せておけば良いからね」