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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

 小紅が三度目の溜息をついた時、廊下でお琴の声が聞こえた。
「お嬢さま、お嬢さま」
「どうしたの? 何かあったの」
 応える間もなく、障子戸が開く。お琴が蒼白な顔で座っていた。
「旦那さまが大変なんでございますよ。とにかく早くおいでになって下さいまし」

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