テキストサイズ

一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第28章 第二部・第六話【春咲く花】 春咲く花

 笈馬は庭先を見渡せる廊下に座り、茶団子を早速頬張っている。
「そのようにお急ぎにならずとも、まだまだたくさん作っていますから」
 小紅が笑うと、笈馬がいやいやと首を振る。
「このようなときに限って、栄之進のヤツがどこぞで匂いを嗅ぎつけてやって来るのじゃ。油断はならぬ」
 大真面目な顔で言うのがまた面白い。
 案の定、笈馬は詰め込みすぎて、噎せてしまったようだ。目を白黒させる笈馬に小紅は急いで茶を淹れた湯飲みを差し出した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ