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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第28章 第二部・第六話【春咲く花】 春咲く花

 小紅が笈馬と穏やかな時間を過ごしていた頃、栄佐は角倉の屋敷で母瑞容院と対峙していた。
 今日は母は居室にいた。彼が丁度訪ねた時、美濃焼の花器に花を活けている最中であった。眼にも鮮やかな紅梅の紅、陽の光を集めたような眩しい黄色の水仙、更に紅瑪瑙のような艶やかな実をたわわにつけた南天。

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