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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第28章 第二部・第六話【春咲く花】 春咲く花

 裏には〝まゐる 源五〟ときちんと記されていた。遺書まで用意していたからには覚悟の上の切腹であったに相違ない。
 源五郎は諌死した。自らの生命をもって自分が育てた主君を諫めたのだ。かつて実の父とも祖父とも慕った守り役の壮絶な死を前に、栄佐は自分の行いがいかに多くの人々を惑わせていたかを知った。

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