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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

「痛むの?」
 小紅が狼狽えると、武平はまた弱々しい笑みを作った。
「たいしたことはない。小紅、やはり私はもう無理みたいだ。できれば生きて、お前とこの人生をやり直してみたいと思ったけれど、もう寿命は尽きたようだ。どうか一生に一度しかない縁を見つけたら、それを大切にして欲しい」
 武平のまなざしがふっと遠くなった。

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