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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

―愛しているよ―
 急に腕から力が抜けた。
「叔父さま? 叔父さまっ」
 小紅は狂ったように幾度も恋しい男を呼んだ。
「お嬢さまっ、旦那さまに何か―」
 折しも番頭が持ち帰り煎じた薬湯を運んでくるところであった。準平が開け放したままでいなくなったので、寝間の様子は廊下からもすぐに判った。

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