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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

 武平の形見の袢纏をきちんと畳んだその時、部屋の障子が開いた。
「―」
 部屋を覗いたのは準平だった。小紅は眼を見開いた。こんな夜更けに何の用なのだろう? 幾ら従弟とはいえ、男が女の寝所を訪ねる時間ではない。
 まなざしにいささかの非難を込め、小紅は準平を見つめた。
「何か、ご用ですか?」
 こんな男にはつけいる隙を与えては駄目だ。小紅はとりつく島もない態度で接した。

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