一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~
第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨
が。佐津は父だけでなく、常に複数の男と深間になり、それぞれの客から相当の金をせしめていたようである。身を切り売りする商売柄、複数の男と関係を持つのは致し方ないとしても、そのすべての男と好いた惚れたと囁き交わし、男をその気にさせ金品を巻き上げていたのは許し難い所業である。
どうせ父も佐津に良い具合に手のひらで転がされていたに相違ない。四十男が娘のような歳の若い女に操られ頭に血が上って、ついには実の娘を棄て店の金や家宝を持ち女と逃げた。
どうせ父も佐津に良い具合に手のひらで転がされていたに相違ない。四十男が娘のような歳の若い女に操られ頭に血が上って、ついには実の娘を棄て店の金や家宝を持ち女と逃げた。