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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

「―させるか」
 次の瞬間、小紅は我が身に何が起きたのか判らなかった。まるで飢えた狼が子ウサギを仕留めるかのように襲いかかられ、小紅は眼を瞠った。
「止めて、何をするの?」
「これきりだなんて言わせねえ。お前はずっと俺のものだ。手放してなんかやらねえ」
 上からすかさず覆い被さってきた準平の眼(まなこ)が一瞬、妖しく輝く。

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