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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 世間を知らない十五の小紅ですら見抜ける事の顛末が、父には見えなかった。それほど佐津にのぼせ上がっていたのだ。金蔓でなくなった父など、大勢の男を知る佐津には何の魅力もないことだろう。
 佐津に棄てられた父はますます自暴自棄になる。ろくに力仕事もできない四十の男に、生きていくすべはあるのか。
 自分を無情にも借金だけ背負わせて棄てた父親だが、実の父親が苦しむのを願うことはできなかった。

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