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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第1章 【残り菊~小紅と碧天~】 始まりは雨

 あんな父親、女に棄てられて、どこででも野垂れ死んじまえば良い。
 そう思おうとしても、思えない。
 女と逃げる前夜、父が呑ませてくれた甘酒にも恐らくは眠り薬が潜んでいたのかもしれない。それも佐津の入れ知恵とも考えられた。
 だからこそ、翌朝まで小紅は一度も起きることなく、いささか深すぎるほどの眠りに落ちたのだ。

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