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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第3章 【残り菊~小紅と碧天~】 旅立ち

 外に出ると、また雪が降り始めていた。不思議なことに、低く垂れ込めた雲間から一条の光が差している。ふと見上げれば、十六夜の月が蒼褪めてその姿を見せていた。
 白い雪が降りしきっているのに、雲間から姿を見せている十六夜の月。まるで絵物語の世界を見ているかのような幻想的な気分になる。
 だが、そんな悠長なことを言っている場合ではない。早くここから出なければ、追いかけてくる準平に捕まってしまう。

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