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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

「あ、そう。ところで、おこうって、どう書くの? 平仮名で良いのかな」
 そんなことを聞かれるのは珍しい。しかもここは字の読み書きはできる人は少ないその日暮らしの貧しい人々が暮らす裏店である。こんな場所で問われるとは考えてもいなかった。
「名前、ですか」
 小紅は戸惑いながらも、〝小紅〟だと説明する。
「へえ、小紅ねぇ。なかなか粋な名前だね。小紅姐(ねえ)さん」

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