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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

 自分よりは確実に年上であろう男に姐さんと呼ばれ、小紅は我になく頬がカッと熱くなるのを憶えた。
「俺は栄佐(えいざ)。よろしくな」
 そのときだった。栄佐の背後から、女のけだるい声が聞こえてくる。
「栄さん、誰なのよぅ」
 鼻に掛かった甘ったるい声には、小紅のような未通(おぼこ)の娘にもそれと判るくらい、はっきりと情事の名残が窺えるような気がした。

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