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一度だけ抱いて~花は蝶に誘われてひらく~

第4章 【残り菊~小紅と碧天~】 流星

 もっともっと栄佐のことを知りたいと思うけれど、彼自身はあまり私生活については語らなかったし、多分、触れて欲しくはないのだろう。
 恋人なんかはいるのかしら。ふと考えた自分に自嘲的な笑みを浮かべる。そんなことを知ったって、どうにもならないのに。
 小紅はその夜はもう仕立物は止めて、今度こそ布団に入った。どういうわけか、今度はすぐに深い眠りに落ちた。冷えていた身体も栄佐のくれた焼き芋のお陰でほかほかと芯から温まっているような気がした。

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